製造請負契約と製造派遣契約とは?

昨今、15歳以上65歳未満の生産年齢人口の減少により、あらゆる分野で労働力の確保が難しくなっており、製造業界でも慢性的な人手不足に陥っています。こうした問題を解消するひとつの選択肢として「製造請負契約」と「製造派遣契約」という外部に委託する方法があります。本記事では、製造請負契約と製造派遣契約の違いについて、雇用関係や業務の範囲などといった面から詳しく解説していきます。

製造請負契約の基本的な定義

製造請負契約とは、請負事業者が製造に関する特定の仕事を完成することを約束し、発注者はその仕事の成果に対して報酬を支払うことを約束する契約です。製造請負契約を直接的に定めている法律はありませんが、請負契約は民法632条に規定されています。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法632条)

製造請負契約の細かいルールは、上記の規定を基礎として企業間で取り決めます。製造請負契約の条件は成果物を納品することなので、契約期間は基本的に委託された業務の履行開始から履行終了までとなります。

製造請負契約について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。

製造請負契約とは?製造業界のトレンドと展望
製造請負契約とは、製造業の一部または全体の生産プロセスを外部業者に委託する契約のことです。本記事では、製造請負契約の基本的な定義から最新のトレンドまで詳しく解説します。

製造派遣契約の基本的な定義

製造派遣契約とは、派遣元事業者が発注者に人材を派遣する契約です。派遣元事業者が雇用する労働者は派遣先の指揮命令を受けながら業務に従事し、報酬は労働力に対して発生します。

製造派遣の契約期間は最長で3年となり、「労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)」が適用されます。この労働者派遣法の第2条第1号には、派遣について次のように定義されています。

自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。(労働者派遣法第2条第1号)

このように業務の遂行を約束する契約方法なので、成果物の完成を問わずに報酬を支払う必要があります。

製造請負契約と製造派遣契約の違いを徹底比較

2つの契約内容はあらゆる点で異なっており、違いを明確に認識していないとトラブルの元となります。ここからは、製造請負と製造派遣の具体的な違いを3つの項目ごとに見ていきます。

①契約上の責任の範囲

製造請負契約では、請負事業者が契約不適合責任を負います。契約不適合責任とは、納品した成果物の種類や品質などが契約内容と一致していない場合に、損害賠償や契約解除といった請負事業者が負う責任のことです。

一方、製造派遣契約では原則として、派遣元事業者が労働基準法や労働安全衛生法などの労働関係法に基づいた責任を負います。労働関係法の事項によっては、派遣先の事業主が責任を負う場合もあります。

また、派遣先では「製造業務専門派遣先責任者」、派遣元事業者では「製造業務専門派遣元責任者」を選任し、個別契約書への記載が必要になります。製造業務では危険な機械や有害な化学物質を取り扱うことが多いため、責任者を選任して労働安全衛生法上の措置を円滑に実施しています。

②契約上の雇用関係

製造請負契約の場合、請負労働者は請負会社と雇用契約を結び、指揮命令は請負会社から行われます。よって、請負労働者と発注者の間に指揮命令関係は存在しないため、発注者が作業の変更などを依頼したい時には請負会社を通して相談することになります。

製造請負契約の図

その点、製造派遣契約を締結している場合は派遣労働者と発注者の間に指揮命令関係が生じます。製造請負と同様に、派遣労働者が雇用契約をしているのは派遣会社になりますが、業務は派遣先にて指示をもらいながら遂行することになります。

製造派遣契約の図

③契約上の業務の範囲

製造請負契約の場合は、直接規定される法律がないため、請負事業者と発注者で契約時に取り決めた内容が業務の範囲になります。成果物の納品を約束する製造請負は、原則として製造工程や作業方法に指示は出せません。

製造派遣契約の場合も、業務範囲は契約時に派遣元事業者と派遣先の間で取り決めた内容になりますが、作業方法などの指示が契約に含まれます。ただ、契約にない時間外労働や休日出勤を指示することはできません。法定労働時間内の範囲で、契約書に記載されていれば指示が可能です。

また、日雇い派遣や派遣労働者の部署移動は原則禁止されています。派遣労働者の労働環境を守るため、派遣元との雇用契約は最低でも31日以上、契約書に記載のない部署などでの労働は契約違反となります。

製造請負契約と製造派遣契約を区別する基準

請負と派遣の区別をしっかりと認識しておかなければ、偽装請負となる可能性があります。偽装請負とは、製造請負契約で取り決めておきながら、実際は製造派遣に該当する取引があることです。製造請負契約を結んだ上で、労働者と発注者の間に指揮命令関係が認められる場合、労働者派遣法が適用され、製造派遣に該当します。

偽装請負の図

ただ、作業方法に対する関与や労働力確保の目的などといった面でどの程度が請負と派遣の境目となるのか、判断が難しい部分も多くあります。そこで、契約の判断をより的確に行えるよう、昭和61年に「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)」が定められました。

この37号告示は、旧労働省(現厚生労働省)が派遣と請負事業の区分する上での具体的な基準を示したものです。製造請負や製造派遣を行う際は、37号告示に則った契約書を作成することで、偽装請負などの労働関係法違反を回避することができます。

認定制度で見る製造請負契約と製造派遣契約の違い

適切な製造請負契約や製造派遣契約を結べる事業者を選ぶには、厚生労働省が設けている「製造請負優良適正事業者認定制度(GJ認定制度)」と「優良派遣事業者認定制度」を基準にする方法があります。

GJ認定制度とは、適正な請負体制を実現するための管理体制や実施能力が認められた請負事業者を「優良適正事業者」として認定する制度です。厚生労働省が定めた「製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に取り組む請負事業主が講ずべき措置に関するガイドライン(請負ガイドライン)」に基づいた審査基準をクリアした事業者が認定を受けられます。具体的には、発注者の事業所や工場または製造請負事業者の自社工場内における業務を遂行する上で、適切な事業体制や規則などを定めているかといった所定の審査方法によって、基準を満たしている事業者を判断しています。

GJ認定制度の目的は、優良かつ適正な請負事業者を認定して公表することで、製造請負事業の適正化と雇用管理改善の推進、製造請負業界における市場競争の健全化を実現することにあります。そうすることで、労働者の福祉向上や発注者側の長期的な質的改善にもつながっていきます。

製造請負優良適正事業者認定制度と同様に、優良派遣事業者認定制度も派遣労働者と派遣先が安心して取引できるサービス基準を満たした派遣事業者を「優良派遣事業者」として認定する制度です。法令遵守のみならず、より良い労働環境の確保や派遣労働者のキャリア支援、派遣先でのトラブル防止策をとるなど、一定の基準を満たした派遣事業者を認定しています。

発注者にとっては、認定をうけた事業者と取引することで
・優良な事業者を選べる
・事業者の信頼性が上がる
・優秀な労働者を確保できる
・コンプライアンス面が強化される
といったメリットがあります。

「インソーシング・派遣事業」と「技術者派遣・受託開発事業」を行なっている株式会社平山は、GJ認定制度と優良派遣事業者認定制度の認定を受けています。GJ認定制度においては一番初めに優良適正事業者として認定を受けた事業者が弊社であり、認定の有効期間を更新して現在までに5回の認定を受け続けています。また、2023年12月には優良派遣事業者認定制度で優良派遣事業者として認定されました。

製造請負優良適正事業者の認定マーク 優良派遣事業者の認定マーク

まとめ:製造請負契約と製造派遣契約、違いを押さえて最適な選択を

製造請負と製造派遣は、外部への委託という点は同じでも契約内容は大きく異なるものです。委託の目的は成果物の納品か労働力の確保かといった点から最適な契約を選び、労働関係法などに触れないよう、契約形態をしっかり把握しておく必要があります。契約の認識に不安がある場合や安心・安全に取引できる委託先選びを重視したい場合は、厚生労働省が設けた認定制度を活用してみましょう。契約内容に不安がある場合や、適正な取引先選びに迷った際は、認定事業者の情報を確認し、専門家へ相談することで、安全かつ効率的な契約管理が可能です。

株式会社平山では、ものづくりの工程すべてを派遣や請負で支援しています。製造請負においては成果物の納品のみならず、現場改善コンサルティングと連動した質の高い請負サービス(インソーシングサービス)を展開中です。製造業に特化したコンサルタントがお客様の現場で調査を行い、最適な環境づくりを目指して改善点を見つけ出します。

平山グループのインソーシングモデルの図

また、弊社では自社研修センターでの「実技研修」、社会人の基礎を学ぶ「ソロフライト研修」、安全・品質・納期を守る「請負現場レベルアップ研修」という3つの教育体制で、人材育成に力を注いでいます。常に人材育成と現状の改善でレベルアップを図り、お客様の現場を成功へと導きます。

株式会社平山の製造請負サービスにご興味のある方は、ぜひ以下のサイトもご覧ください。

現場改善と人材育成に特化した進化型アウトソーシングサービス
株式会社平山の製造請負サービスでは、製造請負だけでなく製造現場の能率向上・コスト削減といった改善が可能です。現場で活躍する人材をお探しの方、製造工程を改善したい方はぜひこちらもご覧ください!
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