食品や医薬品などの製品やエネルギーの生産、ゴミや下水の処理など、日常生活を支える産業の中には、複数の設備が整った施設が必要となるものがあります。こうしたインフラ施設を設計・建築するために重要な役割を担うのが「プラント設計」です。
プラントとは、建築業界で生産設備のことを意味します。こうした意味から、プラントは複数の設備を組み合わせて作られた、比較的規模が大きい産業施設を指すことが多く、「工場」という分類の中のひとつとして捉えられています。プラントと工場の使い分けを表す例としては、生産ライン上で部品を組み立てていく自動車工場などは「工場」、配管で繋がれた複数の設備を有する原料生産工場などは「プラント」となります。
プラントは大きく分けると、「産業系」「石油化学系」「エネルギー系」「環境系」の4分類があります。
1.産業系
産業プラントは、日常生活で必要となる製品や原料などを生産するプラントを指します。後述する化学プラントやエネルギープラントの一部も、産業プラントに含まれることがあります。
産業プラントが使われている製品・原料の例としては、
・食品
・飲料
・医薬品
・金属
・セメント
が挙げられます。
産業プラントでは、生産効率やコスト面の配慮、食品や医薬品などの生産には衛生管理が徹底できる設計が重要です。
2.石油化学系
ガソリン・灯油・LPガスなどの精製や化学反応によって製品を生産するプラントを、化学プラントと呼びます。化学プラントは以下のように、大きく2つに分けられます。
・無機化学プラン:ソーダ工業プラント(塩水から苛性ソーダなどを作り、石鹸生産などに利用)、アンモニア工業プラント(窒素などからアンモニアを作り、肥料やナイロンなどの原料として利用)
・有機化学プラント:原油・石炭・天然ガスなどを原料とするプラント(原油を加工してプラスチック製品を作る石油プラントなど)
化学プラントは火災や爆発に繋がるリスクが高いため、安全性を考慮した設計が必須です。
3.エネルギー系
エネルギーを作り出すプラントは、エネルギープラントまたは発電所・発電プラントと呼ばれます。
エネルギーの生成には、
・火力
・原子力
・水力
・地熱
・太陽光
・風力
などの様々な力を使います。
近年は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを利用するプラントや、ごみ処理などの過程で発生した熱を利用した発電プラントが増えています。
4.環境系
環境プラントは、廃棄物や下水の処理または資源の再利用をするプラントです。以下のような処理施設が環境プラントにあたります。
・廃棄物処理場(食品廃棄物処理施設や廃プラスチック処理施設、溶融炉など)
・下水処理場(下水道の汚水を環境の悪影響とならない水質まで浄化して河川や海へ排出)
世界中で環境保全の意識が高まっているため、日本のみならず海外でも環境プラントの需要が増加傾向にあります。
プラント設計とは、前述のようなプラント全体の設計を指します。プラント全体の構造や設備の組み合わせなどを決めて、プラントが安定して稼働できるように設計していきます。
また、調達した設備のレビューやプラント完成後の検査なども、プラント設計の業務に含まれます。
プラントには様々な種類がありますが、プラント建設の基本的な流れはほぼ同じです。
上記のような流れで進められ、基本設計と詳細設計がプラント設計の主な業務となります。
基本設計では、発注の要件に基づいてプラント全体の枠組みを決めます。プラント内の構造や設備・機器の組み合わせを考え、品質や性能、強度などといったプラントのパフォーマンスに関わる条件を満たす設計を組み立てます。また、建設作業員の作業・移動や資材などの搬入経路といった建設工事に関わる配置・導線計画も行います。
詳細設計では、基本設計で決められた大枠に基づいて具体的な設計を行います。
・ボイラーや熱交換器といった設備の配置設計
・最も効率的に設備間を気体や液体が移送できるように接続する配管設計
・プラント建設時の土木工事や建築工事の設計
・プラントを動かす電力設備や制御システムの設計
・プラントに使用する回転機械(コンプレッサーなど)や防災設備などの設計
プラントの処理・製造ラインや建設工事がスムーズに流れるように、こうした細かい設計を行います。
設計が完了した後は、機器の仕様書に基づいて各種メーカーに見積を依頼し、機器の調達に入ります。費用や工期なども考慮しながらメーカーを決定した後、仕様確認の打合せを行い、メーカーが作成する設計図書(仕様書や設備の図面などから構成される図書)のチェックを行います。
また、完成した機器が仕様に合っているか、性能が基準を満たしているかといった検査もプラント設計業務の一部です。
建設工事の段階では、定期的に現場で建設担当者と確認や調整を行ったり、設備が設計図通りに取り付けられているか・不具合が無いかを確認したりします。
建設が終わると、試運転に入ります。設計通りに機器が動作するか・プラント全体の性能が発揮できているか・安全面に配慮できているかといった、あらゆる条件を念頭に置いた試運転の計画を立て、メーカーや作業員とともに試運転を実施します。
プラント設計は、責任が大きい業務です。万が一、設計の終盤や建設途中で致命的な欠陥が見つかれば、設計の序盤に戻ってやり直さなければならない場合があります。小さなミスが大きな損失へ繋がるリスクが高いため、強いプレッシャーのかかる業務です。
また、プラントの仕様や納期によっては激務になりやすい点もプラント設計の大変なところです。厳密に納期が決められているので、発注者からの催促を受けることもあります。また、複数のプラント設計を掛け持ちして常に納期に追われる状況にもなりやすいため、長時間の勤務や休日出勤が続くことも珍しくありません。
プラント設計に必要なスキルとしてあげられるのは、まず設備・設計に関する基礎知識です。設備に関わる機械や電気、化学といった工学系の知識全般はもちろん、建物の設計や機械設計、配管設計の知識も一通り習得しなければなりません。
また、コミュニケーション力や提案力も大切な要素です。滞りなくプロジェクトを成功させるには、発注元となるクライアントやプラント建設に関わるプロジェクトメンバー、外注先の取引相手などと、円滑にコミュニケーションを取れることが求められます。打ち合わせでクライアント側の要件をすり合わせながら適切な案を出す提案力や、外注先に依頼する際の交渉力など、設計スキル以外の能力も伸ばしていく必要があります。
他には、致命的な欠陥を防ぐためにどのような作業でも丁寧で細やかに行える忍耐力や些細な違いに気付ける注意力、プロジェクトを滞りなく遂行するためのマネジメント力や問題解決能力、海外のプロジェクトに参加する場合は英語を始めとする語学力などが必要です。
近年はSDGsの推進に伴って、世界的にプラントを取り巻く環境が大きく変化してきています。これまでは省エネや効率化を重視した技術が主でしたが、環境への負担を軽減させるために再生可能エネルギーやカーボンフリー、ライフサイクルや天然素材を使った新しい技術開発が急速に進み始めました。この先も、エネルギーと環境技術、製品製造技術を融合した新しいプラントの建設が、ますます増えると見込まれています。
高度な専門技術が不可欠なプラント設計業界ではエンジニアが不足しており、人材確保が課題となっています。また、シミュレーターやCADシステムといった設計ツールのデジタル化に加え、プラントに必要な設備・機器自体もデジタル化・IoT化が進んでいるため、プラント設計に必要とされるスキルはさらに高度なものになっています。従来の技術の中に新たな技術を柔軟に取り込んで融合し、プラント設計に活用できる人材が求められています。
東南アジアや中東などではプラント建設の需要が高まっており、新しいプラントが次々と作られています。こうした国におけるプラント設計の競争力を高めるために、海外進出を目指す日本企業も多数出てきました。こうした背景からも、プラント設計を担えるエンジニアの需要は日本国内でますます伸びています。
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