製造請負契約とは?製造業界のトレンドと展望

製造請負契約とは何か?

製造業の生産プロセスには様々な工程がありますが、その全てを自社内部で行うには多くのリソースが割かれます。そこで製造会社で利用割合が多いのが「製造請負契約」です。
社外の業者と製造請負契約を結び、生産プロセスの一部または全てを業者に委託することで、生産に必要なリソースを削減することができます。
本記事では、製造請負契約とは何か、製造請負契約の利点、製造請負契約時に注意すべきポイントなどを分かりやすく紹介していきます。

製造請負契約の基本的な定義と概要

「製造請負契約」とは、業者(請負人)が製造に関わる特定の仕事を完成させることを約束し、注文者がその仕事の成果に対して報酬を支払うことを約束する契約のことです。

製造請負契約を直接規定する法律はありませんが、請負契約は民法632条に規定されているため、以下の条文が根拠となります。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法632条)

製造請負契約に似たような契約として「製造委託契約」がありますが、これはいわゆる「業務委託契約」のことです。そして業務委託契約の一種として製造請負契約が存在しています。

製造請負契約の意義と利点

製造業界における製造請負契約の役割

製造業界における製造請負契約の主な役割は、以下の2つです。

製造工場では需要に応じて生産量が変化します。生産量が増加した場合に製造請負契約を活用すれば、短期間で一定以上の技術をもつ人材を確保することができます。また生産量が減少した場合は業務を委託せず、必要な時のみに絞って製造請負契約を結ぶことができます。つまり製造請負契約を活用することで、生産量の変動に対応しやすくなるのです。

会社で人材を雇った後、実際に業務をこなしてもらうには一定の教育・研修が必要になり、人件費、研修費、研修時間といったコストがかかります。また労働者の雇用管理を行う必要があるため、雇用管理コストもかかります。しかし製造請負の場合は、製造請負会社が一定の技術を身につけた人材を用意してくれるうえ、労働者の雇用管理を製造請負会社が行うため、そのようなコストがかかりません。また生産量の変動に応じて業務を委託することで、人件費を微調整することができ、コストの削減につながります。

契約の範囲と期間について

製造請負契約を直接規定する法律はないため、請負契約の規定(民法632条)を基礎として細かいルールは企業間で決める必要があります。そのため契約の範囲は、企業間での製造請負契約書で定められた範囲になります。また契約の期間は、製造請負契約の条件が特定の業務を完了させることであるため、委託された業務の履行開始から履行終了までとなります。

製造請負契約時に注意すべきポイント

製造請負契約時に最も注意すべきポイントは、偽装請負にならないようにすることです。
製造請負契約において雇用主は請負会社であり、発注会社が請負労働者に対して指揮命令をすることはできません。一方、製造派遣契約において雇用主は派遣会社ですが、派遣先が派遣労働者に対して指揮命令をすることができます。

製造請負契約を締結しているにもかかわらず、発注者が請負労働者に対して指揮命令を行ってしまった場合は、偽装請負になります。この理由は、契約上は指揮命令ができない製造請負となっているものの、実際には指揮命令をすることができる製造派遣になってしまっているためです。
偽装請負になってしまった場合、原則として請負会社が責任を負いますが、発注会社が責任を負うケースもあります。請負労働者に作業工程を変更してほしい場合や委託している作業の一部を自社の労働者に行わせたい場合は、請負会社の責任者に相談しましょう。

もう1点注意すべきポイントは、製造請負契約が下請法の対象になる場合があることです。下請法の対象となった場合は、発注書面の作成義務が発生します。下請法の対象にならない場合は契約書を作成する必要はありませんが、委託する作業を明確にするためにも製造請負契約書を作成することが一般的です。

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製造請負契約をめぐる新たなトレンドと今後の展望

製造請負契約の現状

製造請負契約においては、偽装請負のように製造請負と製造派遣の区分が曖昧であることや製造請負労働者自身が技術・技能を身につけにくい環境であることが問題になっています。

契約内容にかかわらず実態が製造派遣の場合、労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)が適用されます。しかし、製造請負と製造派遣の違いである「指揮命令関係があるか否か」という点は判断が難しく、区別がつきにくくなっています。そのため、労働関係の法令がきちんと適用できていないという現状が続いていました。そこで労働省は昭和61年に「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(以下、37号告示)」を示しました。さらに、より具体的な例を示すため、平成21年から現在までに37号告示に関する疑義応答集が公表され続けています。

しかし上記の労働関係法令の問題だけではなく、製造請負契約の労働条件は短期間であることが多く、雇用管理が十分ではない現状もあります。そのため製造請負労働者は不十分な福利厚生や雇用条件下で働くことになり、技術・技能を身につけにくくなっていることがあるのです。その改善のため厚生労働省は、平成19年に「製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に取り組む請負事業主が構ずべき措置に関するガイドライン(以下、請負ガイドライン)」を示しました。またそれに伴い、平成22年から製造請負優良適正事業者認定制度(GJ認定制度)が開始されています。

製造請負優良適正事業者認定制度

製造請負優良適正事業者認定制度(GJ認定制度)とは、請負ガイドラインに則って製造請負事業を行っていくために、一定の基準を満たしている事業者を「優良適正事業者」と認定する制度です。
この制度により製造請負労働者の雇用管理が適正化され、雇用条件・福利厚生の改善や技術・技能の向上が見込めます。また労働者だけではなく、発注会社も委託した業務の質の向上や効率化が見込め、製造請負会社も優良な事業者であると社会的信用性の向上が見込めます。

一番初めに製造請負優良適正事業者の認定を受けた事業者は、株式会社平山です(第1号で取得)。認定の有効期間は、認定を受けた年度の翌年度から3年間であるため、初認定後も含めこれまでに5回認定を受け続けています(2024年4月1日現在)。

製造請負優良適正事業者の認定を受けた事業者に委託すれば、一定水準以上の技術・技能を有する請負労働者に自社の業務を行ってもらえます。
具体的に株式会社平山を例に挙げると、まず社内での研修を「実技研修」「ソロフライト研修」「請負現場レベルアップ研修」の3部門で行っており、質の高い業務ができる人材を育成しています。次に、実際の請負業務に入る前に専任のコンサルタントが現場に赴いて現場の診断を行ったうえで、専任の請負プロジェクトチームを編成します。そして業務に精通したベテランのチームリーダーを現場責任者に据え、現場改善コンサルタント・現場責任者・請負チームが協力して最適な請負プランを実行します。実際に請負業務に入る前に人材育成や現場診断等の入念な準備をすることで、質の高い業務を行うだけでなく、業務の効率化や改善・レベルアップにつながります。

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製造請負契約まとめ

製造請負契約には、生産量の変動に対応しやすくなる、コスト削減につながるといったメリットがあります。しかし一方で、偽装請負になってしまうリスクや現場に来る製造請負労働者の技術・技能が不十分であるリスクもあります。そのため製造請負契約を活用する場合は、厚生労働省が示している請負ガイドラインに従うようにしましょう。また製造請負優良適正事業者は請負ガイドラインに従っていると認定されているので、製造請負先を探す際には製造請負優良適正事業者であるか否かが判断基準の1つになるでしょう。

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