製造業界では、繁忙期のような需要が増加する時期に、自社工場では補いきれない製造を外部の業者へ委託する必要が出てきます。そこで、アウトソーシングの手段として製造請負契約が締結されることがあります。製造請負契約を結ぶ上では、発注者(メーカー)と請負事業主には厚生労働省が定めた「製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に取り組む請負事業主が構ずべき措置に関するガイドライン(請負ガイドライン)」に則った、適切な措置が求められます。
請負ガイドラインを遵守した取引先を見極める際、大きな目安となるのが「製造請負優良適正事業者」の認定です。請負や雇用の管理体制・実施能力があると認められた製造請負事業者に対して認定され、認定された製造請負優良適正事業者は、認定マーク取得事業者サイトにて公表されています。
製造請負優良適正事業者は、厚生労働省が設けた製造請負優良適正事業者認定制度(GJ認定制度)による優良な事業者の証で、一定基準をクリアしている請負事業者が認定を受けられます。
優良適正事業者になると公式認定マークの取得が可能です。Good Job(良い仕事)の頭文字を表現した「GJ認定マーク」がついた企業は、GJ認定制度で認められた事業者と、一目で判断することができます。
昨今の世界情勢によるエネルギー価格の高騰や少子高齢化による人材不足など、経済活動への負担の波は製造業にも及んでいます。この先も経済を潤滑に進めていくためには、GJ認定制度を含めた、より良い労働環境整備の取り組みが必要不可欠です。
GJ認定制度は、厚生労働省の委託事業として「製造請負事業改善推進協議会」が行っている認定制度で、2010年度に「請負適正化・雇用管理改善推進事業 製造請負優良適正事業者認定制度」として発足されました。
GJ認定制度の審査基準は請負ガイドラインに基づいて設定されており、「経営方針(18項目)」「ものづくり力(21項目)」「ひとづくり力(17項目)」「労働者保護(51項目)」の4分野、107項目で構成されています。
・経営方針
経営方針の分野では、経営方針の内容、非常時の危機管理体制、派遣と請負の区分基準などが挙げられています。具体的な基準としては、コンプライアンス、製造請負事業の活動推進、労働者の能力開発、適正な事業運営、安全な環境整備の概念を経営方針に盛り込み、その内容を社内外に発信していることです。また、非常時に安否確認ができる体制や発注者と連絡が取れる体制が構築されているかも基準となっています。さらには、製造派遣事業と製造請負事業を区別できるように細かい基準があり、製造請負事業として明確に区分可能な区画や作業区分となっているか、業務上知りえた情報の取り扱いや契約に関する責任への対応を取り決めているか、労働時間・休暇の決定や服装規律の管理は発注者の関与なしに請負事業者が行っているかといった項目が設定されています。
・ものづくり力
ものづくり力の分野で気は、製造請負事業遂行のための施策、基本的・発展的な生産管理活動、技能資格、責任者の配置が挙げられています。具体的には、製造請負事業を推進するための計画・専門部署・専任担当者が存在しているか、生産管理の指標が存在し、生産状況の把握ができているか、効率的な生産体制の構築ができているか、業務上必要な資格を有している者を配置しているかといった内容が基準となっています。また責任者に関する基準には、請負ガイドラインに準拠した事業所責任者・工程管理など責任者を配置しているか、各責任者を育成する仕組みがあるか、氏名などを発注者に通知しているかという基準があります。
・ひとづくり力
ひとづくり力の分野では、キャリアパスの明示・コンサルティング、職業能力開発、能力評価が挙げられています。具体的な内容としては、資格に関する仕組みや昇進・正社員登用実績があるか、キャリアコンサルティングの周知・定期的な実施を行っているかという基準があります。また、職業能力開発の方針や計画の策定・管理を行っているか、職業能力開発のための仕組み・担当者・組織・施設を設けているか、能力評価を行い、その結果が処遇に反映される仕組みがあるかといった基準もあります。
・労働者保護
労働者保護の分野では、労働保険・社会保険の適用、雇用関係の確保、個人情報の保護体制、労働安全衛生の取り組み、法令の周知などが挙げられています。具体的な基準としては、労働保険・社会保険について加入手続き・労働者への説明・発注者への発信を適切に行っているか、雇用関係について雇用契約の内容(仕事内容、必要なスキル、労働条件、使用者、更新の有無など)を明確に示しているか、個人情報の保護体制についてその方針を社内外に周知し、規定やマニュアルを整備しているかなどがあります。また他にも、労働安全衛生の方針を社内外へ周知し、その管理体制の構築・規定の整備を実施しているか、ワークライフバランスを配慮して育児・介護休暇や年次有給休暇の取得を促進しているか、相談・苦情を受け付ける窓口を用意して内容の記録を行っているか、労働派遣法や労働基準法などの関係法令を労働者・発注者へ示しているかといった基準もあります。
審査は、1次の書類審査と2次の現地審査(またはリモート審査)、最終審査の3つがあります。書類審査では経営・事業基盤のチェック、現地審査では基本的に審査機関の審査員が本社や請負事業所に出向き、会社の方針や運用などの現認をします。そして、最終審査の指定審査機関における審査会議を通過すると、優良適正事業者として認定を受けることができます。前提として法令を遵守している事業者であること、その上で適正かつ優良な事業者であるかを厳正に判断されます。
GJ認定制度は、次の2つを実現することを目的に定められました。
・製造請負事業の適正化と雇用管理改善の推進
・製造請負業界の市場競争の健全化
GJ認定制度の導入は良質な製造請負事業者を育成し、悪質な事業を行なっている業者を排除する効果が期待されています。
また、優良適正事業者の認定は請負事業主だけではなく、労働者や発注者側にもメリットが生まれます。労働者保護の概念や危機管理体制が整った環境で働くことで労働者の福祉向上、健全な事業者を取引先に選定することで発注者の製造業務の長期的な質的改善につながっていきます。
製造請負優良適正事業者を選ぶと、主に安心感・生産性・労働災害防止の3つの観点から受けられるメリットがあります。
・安心感がある
製造請負優良適正事業者であることは、信頼できる事業体制やルールを定めているという証明になります。GJ認定制度の評価基準には、適切な請負契約の取り決めや合理的な料金設定、非常時の対策などの項目が設けられているため、製造請負契約を結ぶ際に大きな安心感があります。法令を遵守し、コンプライアンスや運営・管理体制がしっかりと確立している事業主であれば、発注に関わるトラブルなどが起きにくくなります。
・生産性の向上
GJ認定制度は、ものづくり力やひとづくり力が審査項目に入っています。条件をクリアしている製造請負優良適正事業者を委託先に選ぶことで、生産性の向上が見込めます。
生産状況の把握や変動に対応する施策、人材育成の取り組みといった事業体制の有無は、生産性を大きく左右します。
・労働災害防止の対策ができている
労働環境の整備は、安心安全な生産と安定した供給を行う上で重要なポイントです。労働者の安全を考え、労働災害防止の措置を適切に取れる製造請負優良適正事業者に委託すると、製造業における様々なリスクを最小限に抑えることができます。
委託先を選定する際、コスト面や製造工程の整備などの条件に見合う業者をピックアップしていきますが、価格重視の業者選びは極力避けた方が無難です。法令遵守は当然のこと、生産管理体制や変動に対する施策など、製造業の良質なノウハウを持った請負業者を選定しなければリスクが大きくなり、かえってコストがかさむ恐れもあります。製造請負事業を選ぶ際の判断基準として、価格だけではなく適切な体制やルールが構築されている事業者であるかも考慮すると良いでしょう。
GJ認定制度第1号の取得事業者である株式会社平山では、現場改善コンサルティングと連動した質の高い請負サービス(インソーシングサービス)を行なっています。製造業に特化したコンサルタントが調査を行い、最適な環境づくりのために改善点を見つけ出し、製造工程のレベルアップを実現していきます。請負依頼をいただいた後は専属請負チームを作り、業務内容に精通した責任者とスタッフが安定した請負事業を進めていきます。
また、自社研修センターでの「実技研修」、社会人の基礎を学ぶ「ソロフライト研修」、安全・品質・納期を守る「請負現場レベルアップ研修」という3部門の教育体制を整え、人材育成に力を入れています。常に人材育成と現状の改善でレベルアップを図り、請負現場を成功へと導きます。
株式会社平山の製造請負サービスにご興味のある方は、ぜひ以下のサイトもご覧ください。
発注者にとって、請負業者は事業をともに発展させていく大切なパートナーです。製造請負優良適正事業者認定制度は、適正かつ優良な製造請負事業者を探す際の大きな助けになります。安心安全な契約を結ぶために、ぜひGJ認定マークを目安にしてみてください。